すでに誰も覚えてないだろうが、ネタとして勝手に使ってる、そんな黛専用課題。
続きなんてないよ。\(^o^)/
【異文化コミュニケーション】ギオ×九尾っく編
『二兎追う者は、一兎を逃し、一矢を失う。』
邪なる神が言の葉を落としたのは、昨日のことだ。邪神の予言は、残酷なほど外れはしない。陛下はその意味するところを理解して、憂えていた。
予は失うのだ。……何を? 誰を?
しかし、クリスタルに放たれた邪神の恒真命題は、何の情報も与えてはくれない。
予は失う、何かを、若しくは誰かを。
杞憂であれ、と心の奥底で願いながら、今日を迎えた。高くて真っ青な空を見上げる。天球には一つの小さな亀裂。縁は赤く腫れ、亀裂に続くヒビが涙のように流れいた。決して泣くことのない己の代わりを務める如く。
「敵がいるっていうのに、戦わせてくれないとはどういうことですか!」
バーラムが不満を口にした。戦闘狂に待機命令は不満極まりない。
「ビズ・ウォードの予言では敵は二体。まだ、一体しか落ちて来ていない。二体目が来たら、存分に暴れさせてやる。」
それを聞いて、バーラムはまだ不満げだったが、大人しくなった。待てのできる猫は嫌いではない。ウサギと形容するにはあまりにも形が違いすぎる、敵の一体目は、町からだいぶ離れた人の住んでいない場所に落ちてきた。ギオと聖騎士団を向かわせ、昊騎士団と竜騎士団は待機させている。
もう一体はどこだ。
そして、予は何を失うのか。
謁見の間の扉が勢いよく開けられる。
「報告! 報告! 城下街の上空に亀裂発生!」
「郊外に弾き飛ばして、始末せよ! 行け!」
「「はっ!」」
予測の範囲内だ。町に現れては被害は甚大になる。だから、一番素早い星属性を手元に残しておいた。バーラムの早さなら、落下最中にたどり着き、町に落ちる前に、一撃を加える余裕がある。
落ちてきた敵は、世界でも特異な存在だった。次元の狭間に棲息し、次元の破片を食って生きる、次元間回虫。本来ならば、次元内に入ってくることはない。四次元界への侵入の原因は不明。目下の問題は、そいつがとてつもなく強いこと。次元の外を回遊するのは伊達ではない。幸なのは知能が無いことか。
窓から町を眺めると、丁度亀裂から落ちてきたばかりの回虫が、郊外へと吹っ飛ばされた。どうやら、間に合ったようだ。後で、バーラムに褒美でも取らせてやろう。3次元への一泊許可証なら喜ぶだろう……。
――――――
眼前にそびえたるは、巨大な回虫。見た目は最低、強さは最悪。部下がその図太い尾で薙ぎ払われるのを、ギオは見ていた。放った矢は刺さらず、下ろした刃は、弾かれる。決定打のないまま、消耗戦が続いていた。こちらの一方的な、ではあるが。
近くに控えていた兵士に声をかけ、兵士全てを敵から遠ざけるように言付けた。
「ギオ様がでるぞー! 離れろぉ!!」
全員が離れたことを確認して、ギオは回虫の背に飛び乗った。これでけりを付けてやる。意識を集中させ、己の中の力を引き出す。
「はぁっ!」
息を吐き出すと共に、自身の周りから、熱が放出される。万度の炎が芋虫を包み込む。ギオの力は熱量操作。増やすも減らすも自在だが、唯一の欠点は、周り一帯を全て巻き込んでしまうこと。一対一では無敵でも、団体戦では使えない。さすがの次元生物も、これには耐えがたいだろう。表面の強いものは総じて、内側はもろいもの。表面を炎で総なめにして、後は兵士たちにとどめを刺させよう。ギオは回虫から離れようとした。
足元が揺れた。回虫はもがいて、地面ごと次元の壁を食い破った。四次元界の大気が、生じた亀裂に呑まれていく。ギオは自分の真下に開く黒い大穴に気がついた。熱に狂った芋虫は、ギオを巻き込んで、穴へと逃げた。
「ギオ様ーー!!」
悲痛の叫びは、ノードムのものか、兵士のものか、それとも伝令のものか。一瞬で異空間に引きずり込まれたギオには、判別不能であった。
――――――
ノードムからの報告に、四次元皇帝は頭を抱えた。自分が失ったのは、四次元軍最強と歌われる、一番の腹心だったのだ。まさしくギオは陛下にとっての一矢であった。四次元界を知りつくす彼は、けれども、四次元界以外には極端に疎い。生きていた所で、見つけられる自信はなかった。……どうしたら良いんだ。
バーラムとラゾンは、互いに顔を見合わせたきり、何も言えなかった。
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